大判例

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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)12530号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(ロ) 次に被告矢島建設は、本件事故について、使用者の立場に立たないと主張するので、この点について考える。

<証拠>に弁論の全趣旨をあわせると、次のような事実が認められる。

訴外松本良夫は昭和四四年一月頃より、自己の名を冠した個人経営の配管業を営んでいた者であるが、同年五月頃よりは、土木建築の請負業を営む被告矢島建設の営業一部門である配水管工事の下請を行なうようになり、爾来専ら右下請工事に従事し、被告矢島建設又は同被告により選定された監督員の監督にその雇人ともども服し被告矢島建設名の表示を施してある工事現場に常駐して作業に当つていた。この間訴外松本は、被告矢島建設以外の業者である訴外坂井設備より配管工事を請負つたこともあるが、右坂井設備も被告矢島の下請業者という立場にあつたものである。被告貞包は、前同年四ないし五月頃より右松本に自動車運転手として雇傭され、加害車の運転を委ねられていたが、右のような事情から、自らも被告矢島建設が勤務先で、訴外松本は職務上の上司と信じ行動していたものであつて、本件事故も同日朝右下請工事施工のため利用する加害車を点検後、暫時別作業に従事してから、これにガソリン等給油に赴いた帰途のことであつたものである。<中略>

右認定事実によると、被告矢島建設は被告貞包を直接雇傭したものではないが、専ら被告建設の土木建築事業の一部門といえ、本来は自らの一部署が担当しうべきもので、それ故に現場においても被告矢島建設の表示がなされている配管工事の下請に従事する訴外松本の雇傭人である被告貞包を、右下請工事の場において自らあるいは選定した監督員を通じて指揮監督しうる、ないしすべき状況にあり、その一環として被告貞包の運転する加害車についても、右下請工事のため利用する加害車の運転業務について指揮監督する立場に立つていたものであり、本件事故は右加害車を、作業について利用するため、まず給油等のため乗り出しての帰途発生したものであるから、被告矢建島設は、本件事故について使用者としての地位にあるといわざるをえず、また、事故はその事業の執行について生じたものといえるから、使用者としての責任を免れない。

(ハ) 最後に被告高沢の運行供用者責任について考える。

証拠および弁論の全趣旨によると次のような事実を認めることができる。

被告高沢は、訴外松本良夫の義兄と職務上同僚として交際を結んでいたところ、昭和四四年三月頃、右義兄より乞われるまま、その一ケ月ばかり前知り合うようになつただけで、業務上なんら連係したことのない訴外松本が加害車を購入するのに当たり、その代金を、第三者として売主に弁済し、その求償権担保のため、加害車登録名義を自己のものとした。その後の昭和四四年五月訴外松本は右代金を被告に返済したため、被告高沢はその名義変更手続の準備行為として印鑑証明書を用意したこともあつたが、訴外松本が道路運送車両法に定める検査終了後にこれをなす意図をももつていたことから、その実現に至らぬうち本件事故となつた。しかしかような事情から、被告高沢は加害車を利用したことは一度もなく、その維持費はすべて訴外松本によつて賄われていたのである。

右認定事実によると、被告高沢が加害車の登録名義人となつたのは、自己の債権担保のためであつて、加害車についてはその運行支配と利益を取得したことはなかつたものといえるから、同人をもつて加害車の運行供用者とみることはできず、その他同被告が本件事故について損害賠償責任を負うべき事由はなんら主張されておらずまたかかる事実も窺われないので、原告らの被告高沢に対する本訴各請求は理由なく、いずれも失当である。 (谷川克)

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